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広告雑感アーカイブ(1)

マンスリー広告批評〈05.5月〉

私が“なるべく毎日”発信している2つのブログとコラムから、広告関連の話題をまとめてみました。「マンスリー広告批評」向けに書かれたものではないので多少テイストは違いますが、見逃された方はぜひご覧ください。
※表現の領域まで踏み込んだコメントについては(本欄の趣旨と異なりますが) ご勘弁ください。
※ブログの場合に付けている写真は省略しています。

■ブログ「日本のコトバ」から。
※本年1月〜2月までの広告関連のコメントを抜粋しました。


「鑑真」の広告。
「唐招提寺展-国宝 鑑真和上像と盧舎那仏」の広告に付けられたキャッチフレーズである。
鑑真と言えば、10年間に5回試みた日本渡航にことごとく失敗し、5回目には嵐に遭遇して南シナ海の海南島まで流され、引き返す途中で盲目になり、6回目の航海でようやく成功し日本の地を踏んだ時には67歳になっていたという逸話を残す。
このキャッチフレーズは、単なる駄洒落ではなく、そうした鑑真のプロフィールがしっかりと刻まれたものだ。
1982年に「火がある、人がいる。」「水がある、氷がある。」という、魚住勉さんか作られた名コピーがあった(サントリー・オールド)。
「ガンとくる。ジンとくる。」には懐かしいあの時代のコピーの匂いも立ち上ってくる。これを見て、最近こんな(力を感じさせる)トーンのキャッチフレーズがなかったなと改めて思った。一見、安易、に見えるが、とてもうまいコピーだと思う。
(2月23日)


「ダブルミーニング」という遊戯。
スポーツ紙がやっているような駄洒落やステレオタイプなダブルミーニングは興醒めだが、それとは別にあっけらかんとした言葉遊びに笑いがこぼれる時がある(映画『オーシャンズ12』の会話はトリプルミーニング盛りだくさんだそうですが)。
街角で見つけたこんなコピーは楽しい。「時代を握る。」と言えば普通は “この回転寿司はいま時代が注目する(時代を象徴する) ”みたいな意味合いになるが、「伝統の味」と謳っているところを見ると、“古き良き時代の寿司の味を大切に握る”という意味合いを含ませたかったのかもしれない。
いずれにしても真面目なのか洒落っ気なのかは分からないが、スケールが大きいことは確かでそこがまた笑いを誘うのだ。花屋さんで「時代を生ける」なんて言っても今ひとつ違う。回転寿司が言うところが何となく楽しいのだから、言葉は不思議だ。
(2月16日)


「もてなす」という誇大。
本日「Yokoso! Japan」なるキャンペーンの中吊り広告を見かけた。2月5日〜2月20日の約2 週間、日本に来る外国人を「ようこそ」と出迎えましょうという観光立国の動きの一環であろう。
もちろん趣旨は大賛成だ。ただ、キャッチフレーズの「日本中“おもてなし”が満開の2週間に」は止めてもらいたい。“おもてなし”とは「客に心を込めて応対する」ことだ(『新明解国語辞典』)。もちろん「もてなすくらいの気持ちで接しましょう」という広告的な意図は分かる。しかし、店に客として入店した者にさえ接客のプロが“心を込めた”接客ができないという日本人のコミュニケーション能力の低下の前では、安易に“おもてなし”などという言葉を使うべきではないと思う。
それでなくても未だに外国人差別を日本在住の外国人に指摘される日本だ。“ようこそ”という元々のコンセプトで充分だった。それすら我々には難しいのだから。
(2月10日)


「カエル」という不変。
民主党から「カエル」のイラストが大きく入ったカレンダー付マウスパッドが送られてきた。ネットによるアンケートに答えた謝礼である。 カエルの右下には「政権カエル」という小さなキャッチフレーズがあった。広告的に「カエル」を使って何かを“変える”というメッセージを送るキャンペーンは年に一度はどこかの企業・団体で行われている。ステレオタイプな広告の表現方法の一つだ。
昨年、同様に「カエル」を使った“変える”キャンペーンを東京メトロのポスターで見かけた記憶があるが、もちろんなかなか変わった例しはない。民主党には期待しているのだが、この「カエル」は縁起が悪い。
(2月8日)


「おすすめします」の嘘。
生産者の分かる農産物が人気とかで、同様の効果を狙って売場担当者の推薦文が店頭POPによく使われている。
ただその際は言葉もその人なりの実感を込めた表現にすべきである。なかには、フロア主任あたりがパンフレットのコピーをそのまま書き写したようなものも多く見られる。冬用の女性下着に対し「遠赤加工であたたかい」と店員も言うかもしれないが、おすすめするなら試着したうえで「下着一枚重ね着したかと思うほど上半身がぽかぽかでした」程度の言葉を付け加えないと、顔写真入りのメッセージが泣くというものだ。 (2月7日)


「水と、空気」という正論。
水と、空気と、ヴィッツ。広告的には極めて正しいキャッチフレーズである。快適なドライビングを約束してくれるルックスとパフォーマンスは、それこそ水や空気のように心地よいと言えるのだろうし、何より燃費からリサイクル仕様まで環境負荷提言を目指したその“エコ”コンセプトは、堂々と「きれいな水と空気を大切にする」とやはり、言えるのだろう。
しかし増え続ける自動車の排ガスが二酸化炭素の排出量を増やしているのは紛れもない事実だ。だからこそ、広告的には極めて正しいこのレトリックに恨み言を言いたくなる。
たとえ広告的には正しくても、自動車の広告で堂々と環境について語るべきではないと私は、広告業界の賞を総ナメにしたあのトヨタの「エコプロジェクト」の広告の時からそう思っている。
(2月4日)


「省エネ」という変化球。
今日、JR山手線で(財)省エネルギーセンターの広告キャンペーンを見かけた。省エネルギーセンターがやるのだからキーワードが「省エネ」になるのは致し方ないのだろうが、「暖房の設定温度を20℃にすると、電気で291円/月、ガスで360円/月、灯油で71円/月 も省エネできます」と言われても、家計の節約広告か? で終いではないだろうか。
仲間由紀恵をキャラクターにモニターで流している映像では「当り前のようにエネルギーを使う時代は終わりました」とメッセージしているが、深刻な“環境&エネルギー問題”と「省エネ」という言葉がもたらす(『電気代の節約』に近い)感覚との隔たりが気になった。
しかしそれよりも「何で二酸化炭素減らすの?」「二酸化炭素と電気、どんな関係があるの?」「電気代払ってるのに、何でエネルギー使っちゃいけないの?」程度のレベルではないのか、日本人!
(2月3日)


「この」という曖昧。
マニュアルの分かりづらさは様々な場所で指摘されているが、例えば次のような言葉への心遣いがない限り、いつまでたっても“10ページ先を読まないといま読んでいるページが分からない”マニュアル作りはなくならない。
地下鉄の“ドア上” に「このドアが開きます」という表示があることにお気づきの方は多いだろう。私は本来この告知は「下のドアが開きます」が正しいと思う。「この」を「下の」に変えるだけだから文字数も同じだ。「このドアが開きます」の表示はドア部分にはないから「このドア」は正しい指示ではない。「でも分かるだろう」と言われるかもしれないが、この場合は頭の中で一度租借する必要が生まれる。「下の」はより正確で直接的だから考える必要がないのだ。
この種の曖昧さが発展した時、マニュアル、つまり人に何かを説明する文章は分かりづらくなるのである。
(1月16日)


■コラム「今日の気になる言葉123」から。
 ※本年1月〜2月までの広告関連のコメントを抜粋しました。


「商品
 そのものに
 魅力の
 ないモノを
 いくら
 売ろうと
 しても、
 本当は
 無理
 なのだ。」

なる言葉を始め糸井重里氏が90年代から次第に広告から遠ざかった理由を隠す事なく述べている。「ほぼ日刊イトイ新聞の本」を後ればせながら本日読了した。この天才にしてコピーライターという仕事の不条理に陥っていたとは。しかしHPを始めてからの描写は痛快!
●No.1374/05.1.26
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