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広告雑感アーカイブ(2)

マンスリー広告批評〈05.5月〉

私が“なるべく毎日”発信している2つのコラムから、広告関連の話題をまとめてみました。
「マンスリー広告批評」向けに書かれたものではないので多少テイストは違いますが、見逃された方はぜひご覧ください。
写真は「『オンガク』という決意」なる見出しを付けてブログで発信したソニー「新ネットワークウォークマン」のキャッチフレーズです。 ※表現の領域まで踏み込んだコラムについては(本欄の趣旨と異なりますが)ご勘弁ください。基本的に ポジティブに批評するよう心がけています。
※ブログの場合に付けている写真は省略しています。

■ブログ「日本のコトバ」から。
※本年3月〜5月までの広告関連のコメントを抜粋しました。


「一年ぶり」というレトリック。
夏と一年ぶりに再会するという「脚本」を創りあげた広告の世界。コピーライターは気持ちよかったと思います。このコピーができた時。(5月16日)

※たまプラーザ東急SCの中吊り広告のキャッチフレーズ「一年ぶりに、夏と再会した。」を取り上げた「モブログ(携帯電話からのブログ投稿)」です。 したがって字数が限られています。


「オンガク」という決意。
iPodを追撃するソニーの新ネットワークウォークマンの駅貼広告が展開されています。
ひらがなとカタカナだけで作成されたこのキャッチフレーズ、ある意味、画期的な表現でした。マス広告で「音楽」を「オンガク」 と書いたものってあったでしょうか(覚えている方がいらっしゃったらご連絡ください)。
カタカナだけのキャッチフレーズは何年も前からあったのに、広告表現が「音楽」をひたすら守ってきたのは、これまでの音響機器が音質を求め ていたからだと思います。「音楽」を「オンガク」と書くことは決して音質のよさにはつながらなかったのです。
しかし、それはあくまで商品そのものが従来の音響機器のコンセプトの範囲内で販売されているという前提の話です。
今回、ソニーが「オンガク」を使ったのは、新ネットワークウォークマンによって、新たな音楽=オンガクの提案をしようという意思表明だと思います。
つまり、「世界最長1約40時間2スタミナ連続再生」をはじめとする機能性で世の中の「音楽」の楽しみ方を変えたいというメッセージが、 この「オンガク」には込められているのです。
私はいま、ソニーと仕事の結びつきはありませんが、“盛田昭夫”ファンとして、この新商品を応援したくなります。(5月13日)


「住まう」という異常。
エックス橋さんの「ゾッとする言い回し」に紹介されていたサイトに、いろいろ学ばせてもらいました。一つは、 やはりコトバへの好き嫌いの感覚って、人それぞれ違うということ。もう一つは、考えて発していないコトバにとても 真っ当に厳しく反応されていること。最後の一つは、広告特有のフレーズって、やはりしっかりと嫌悪されているということ、です。
●一般の不動産広告。
「不動産広告のタイトルほとんどすべて」がゾッとするという方がいました。しかも「○○に住まうという贅沢」という事例まで挙げて。 この感覚、大変よく分かります。極論すると、マンションの分譲広告って10秒あれば作れるのです。東京の世田谷区なら「世田谷に住まう贅沢」。 このキャッチフレーズ、恐らくどこかの広告にあるはずです。世田谷区や文京区など比較的、住環境が整っていると評価される地域なら「憧憬の」を付ければ事 足ります。もちろん、「目黒駅徒歩7分」という類の最寄り駅からの利便性を強調するキャッチフレーズが最も多いことは言うまでもありません。
●不動産広告らしくない広告。
多くの不動産広告は、こうしたステレオタイプな特有の世界で構築されていて、時に「不動産広告らしくない広告を作ってほしい」と 依頼されることがあるくらいです。
「芝浦の島を探してみてください」と言う、SMAPが(鳥たちの)声だけで登場するCMがあります。Shibaura Island「Grove Tower」の 不動産広告ですが、これは電通出身のクリエイティブディレクター・佐々木宏さんの会社「シンガタ」が中心となって制作されたもので、 従来の不動産広告と全く違う地点から発想しています。
なぜ決まり切ったキャッチフレーズが不動産広告には使われるのか? それはやはり決まり切った出演者で構成されたバラエティをテレビ 局が制作するのと同じ理由でしょう。一応は視聴率(広告効果)が取れる=むしろ冒険が恐い。考えなくても作れる。このディレンマから 抜け出す努力を広告業界も懸命に行っています。だって「不動産広告のタイトルほとんどすべて」がゾッとするという消費者はかなりの数、 存在しているはずなのですから。(5月4日)


「ブザ」とうマスターべーション。

「ブザー」の長音符号が省略されて「ブザ」と書かれたケースを目にしたのはもう5年以上も前だ。
「コンピュータ」か「コンピューター」か、どちらが正しいかについては、54年に国語審議会から「原則は長音符号を付ける。ただし、 省く慣習のあるものや、これから造る術語では必ずしも付けなくてよい」という見解が出ている。
その企業の言語文化に従う広告文の世界では、圧倒的に「コンピュータ」と書くケースが多い。つまり“長音符号の省略”が主流だ。 いま日本IBMが「コンピューター」という表記を用いている。大手ではこの企業だけではないか(全社調べられた方がいらっしゃったらご連絡ください)。
戦後、文部省(当時)が学術用語の統一を試みた際、長音符号を付けるという理学系と、付けないとする工学系との間で論争があったという。だから、 どちらが正解かというテーマは無意味なのだが、「ブザ」については多くが違和感を抱くのではないか。“長音符号の省略”に酔っているとしか思えない、 マスターべーションの匂いを感じる(ライブドア検索→『マスターベーション』53件/『マスタベーション』7件)。「省く慣習」が無思考のまま無制限に広がる ことを憂えるのである。(4月15日)


「一票」の未来。

「じぶんの一票が、誰かを幸福にする。」いま露出されている(財)明るい選挙推進委員会の車内吊り広告のキャッチフレーズだ。う〜ん。
政治家のことを「みんなのために何かをしてくれる」と言っている。う〜ん。
政治のことを「人を救ったり、守ったりしている」と言っている。う〜ん。
もちろんこれは(耳ざわりのよいコトバを並べなければならない)広告だ。ただし、商品の広告なら効果効能は科学的に証明されていなければ できないが、政治の広告にはそれすらも必要ない。だから政治の広告は難しいのだ。また、だからこそ気を付けなければならない。この、 格調の高いトーンで書かれたコピーの質は水準以上であると思う。しかしそれでもなお、あっけらかんと政治及び政治家を持ち上げたメッセージは、 良くも悪くも政治に白けている有権者に対して効果が疑わしいと思わざるを得ない。「そんなのウソじゃないか」なんて声がすぐ聞こえてくることは 間違いない。この明らかなる有権者の意識を、コピーライター及びスポンサーである(財)明るい選挙推進委員会はどう考えたのか。いま政治の広告は、 政治がどうしようもなく堕落しているという前提で作成しなければならなかったのではないか。
写真は、この広告の右下に配された世代毎の投票率の棒グラフだ。世代が若くなるにつれて見事に低くなっている。例えば10年後、棒グラフは全ての世代で 現在の20代のように低くなってしまうのではないか。これからの世代が予想外の政治参加を見せない限り、可能性の決して低くはない予想だ。
そんな恐ろしい状況を、この広告は無視していると思う。
(3月23日)

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