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広告雑感アーカイブ(6)

マンスリー広告批評〈10.1月〉

私が発信している当Webサイト「今日の気になる言葉123」とブログ「いいコトバ」の2009年度更新分から、広告(業界)関連の話題をまとめてみました。
「マンスリー広告批評」向けに書かれたものではないので多少テイストは違いますが、見逃された方はぜひご覧ください。

※表現の領域まで踏み込んだコラムについては、社会的な視点を重視する本欄の趣旨と異なりますがご勘弁ください。“公には二流”のコピーライターとして、クリエイティブの視点からの評価は極力控えているつもりです(と書きつつ、JRAのCMにいきなり注文をつけていますが、タニノムーティエ・アローエクスプレスの頃から競馬を見続けてきた私にとって、あのCMは見るに耐えません。たとえ競馬初心者がターゲットであっても、です)。
※なお、ブログに併載している写真は省略しています。

 

■弊社WEBのコラム「今日の気になる言葉123」から。

「迫る赤字転落の危機。」
と中央競馬会の窮状を特集した「日本経済新聞」本日朝刊。傍目八目を承知で言えば、13年連続で収入減を続けたこの間、CMは、競馬の魅力を語らないおふざけ調に終始した。イメージアップにもなっていないと私は思う。胸打たれる競馬のドラマをなぜ語らないのか。
●No.3173/09.12.30

「いっしょに笑えば、あったかい。」
というキャッチフレーズは分かる。しかしサブキャッチも「気づいたら、笑顔。」だ。しかも小見出しには「冬休みも笑顔いっぱいの東京ドームシティへ。」と、またも「笑顔」。もちろん広告にはこの種の重複による強調手法はある。私はここに暗い世相を感じるのみだ。
●No.3170/09.12.27

「ファッションレイン。」
「東京靴流通センター」鶴間店(神奈川)の店頭に掲げられたPOPの言葉だ。一見おしゃれな語感だが実は「ファッショナブルなレインシューズ」を言いたかったらしく、微妙な表現。でも、この種のレトリックって莫大な額をかけたマス広告でも横行している気がする。
●No.3169/09.12.26

「生き抜く力を。」
先日、山手線車内で見つけた「東京電子専門学校」のキャッチフレーズ。中央教育審議会が「生きる力」を掲げたのは1996年だが、景気後退のご時世ではこの表現になる。結局、生きる力は子供たちをどうしたのか、疑問を残しつつ無責任に日本の教育はただ後退する。
●No.3102/09.10.20

「インサイト。」
洞察力を示すこの言葉が商品のポジショニングと同意で語られ始めている。見えなくなった消費者のニーズを積極的に掘り下げ商品特性との接点を見つけようとする試みだが、流行語になり打合せで使われ始めるのを想像すると嫌になる。この考え方は大切だが便乗は困る。
●No.3056/09.9.4

「句点。」
「責任力」をはじめとする衆院選の広告に対するテレビ・新聞の論評で句点を付けるのがあたかも広告の軽薄さと言わんばかりの言い方を目にした。句点に誰もが納得する規則はない。だから新聞が見出しに句点を付けないから付ける広告を非難するのは思い上がりである。
●No.3054/09.9.2

「品質へのこだわり。
 仕事への誇り。
 微細なものづくり。」
これらを「日本人の感性に支えられた世界最高の技術力」で受けた自民党マニフェスト17ページ。まず最初の2つを技術力で受ける文脈は誤りだし感性で支えられた内容ではない。3つ目の日本語も不可解。読んで政策云々以前に頭痛がした。どうした! コピーライター。
●No.3043/09.8.22

「ボーヤハント。」
を初めとするいわゆる「駄洒落」による広告文のスタイルを確立した事でも有名なコピーライターの眞木準氏(6月22日逝去)の追悼文が本日の「朝日新聞」夕刊に。私は広告学校で眞木氏に学んだ程度のご縁しかないが、しかし急性心筋梗塞での60歳の死は早すぎる。
●No.3036/09.8.15

「責任力。」
自民党の選挙向けキャッチだ。1日の「週刊ニュース新書」で田勢康弘氏は「コピーライターが作ったもので軽い」と述べた。いつも政治広告で感じる事だが、昨今の政治情勢に“いかにも”の広告表現は適さない。政治という商品の信頼がそれだけ失墜しているのである。
●No.3024/09.8.3


余裕の
ゆうちゃん。」

レイクの広告のキャッチフレーズだ。「ゆう」とはキャラクターの山田優を指す。ブランコに乗ったビジュアルにこの広告文が何ともほのぼのとして好きだったのだが、先日女子高生(JKですか)が電車内で「カワイイ!」と話していて「伝わっているんだな」と思った。
●No.2984/09.6.24

「法的に
問題はない。」

と言われ福祉団体の定期刊行物にチラシを同封したセシール(本日の『朝日新聞』夕刊)。この言葉を聞いたら、果たして誰でも心が動くものか。いや、例えば広告業界はDMにおける郵便物のルールを丹念に精査し真摯に違反を避けてきたはず。日本人の倫理観はどこに。
●No.2944/09.5.15


「UL・OS。
おさきに、
どうぞ。
彫望。」

順に大塚製薬のスキンケア商品名、春の全国交通安全ポスターのキャッチ、都交通局中吊広告「朝倉彫塑館」キャッチ。いずれも「潤す」「 (相武)紗季」「眺望」に掛けた、いわゆる“駄ジャレ表現”。ネーミングはやはり恥ずかしい(通販ぽい)が、永遠不滅の世界だ。
●No.2915/09.4.16

「生き残った
うしろ
めたさ。」

博報堂最高顧問の近藤道生氏が吐露した第二次世界大戦への自責の念である(本日の『日本経済新聞』朝刊)。病気だった自分に代わって会議に出た上官が襲撃され戦死するなど運命はなおさら悲痛な曲折を遂げる。我が父にも同じ想いはあるのだろうか。訊くのが、恐い。
●No.2914/09.4.15

「便利で
分かり
やすい。」

とCM告知していたオンラインでの確定申告書類作成。セレクトショップ経営の妻は理解できなかった。しかし、自らWEBとBlogを制作・運営しインターネット通販を行なうレベルの人物が理解できないシステムがCMの言葉通りか否かは極めて怪しい。これぞ広告。
●No.2899/09.3.30


■ブログ「いいコトバ」から。


10年先も20年先も、そう思い続けること。
これは、「どうすれば、いいコピーが書けるようになりますか?」という 質問に答えたコピーライターの国井実果さんの言葉です (『ブレーン』10月号)。
資生堂の「一瞬も 一生も 美しく」というキャッチフレーズ、ご存知ですか?
この作品をはじめ、いま広告界で最も注目される方です。コピー云々という よりも、「人生の目標を達成するには?」という問いへの返事とも言えるのでは ないですか。いますぐ叶う道などないし、これでいいということはないのだから。

10年先へ、20年先へ、そう願い続けること。全てに共通する道です。
(2009.10.5)

迷ったら                                      
笑えるほうに。
これは、アートディレクターとして有名な米村浩さんが設立したno problem という会社の「社是」として掲げられている言葉です (『ブレーン』5月号)。
テリー伊藤さんが作ったとのことですが、「迷った時ほど楽しく、前向きに」という思いが込められているのだそうです。
そうですね、そんな風に考えると、この時代、ラクに生きられるかもしれません。
人間誰しも悩みは尽きません。広告業界も不況の影響を受けております。

私の場合、最近は「いまこの時を大切に」で何とか乗り切っています。
(2009.6.4)

人は誰でも遊びっていう名前の劇場を持っている。

これは1973年の日本中央競馬会の60秒テレビCMで寺山修司さんが述べている 言葉で、CMプランナーの麻生哲郎さんが紹介しています
(『ブレーン』6月号)。 「人生じゃあ負けられないようなことでも、遊びだったら負けることができる。」
だから、人生が遊びに投影される訳ですね。したがって遊びには意味が求められ ない。だって、人生を投影して「遊ぶ」のが遊びだから、そこに意味を求める のがナンセンスなのです。でも、逆はダメですよ。

人生に、遊びのラクさや刺激やカッコよさや切り札を求めても。
(2009.6.4)


映像を見て最初の五つの音が浮かぶかどうかが勝負。
そう語ったのは、「アラビアのロレンス」などの映画音楽で知られた モーリス・ジャールさんです (9日の『朝日新聞』夕刊/惜別)。
なんか、クリエイティブの真髄を衝いてますね。要するに、パッと思い浮かんだ アイデアが、その後のもがき苦しんだ末の発想より優れているということ。
そんなことが結構あるんです。さんざん考えた挙句、やっぱりアレだな、なんて ことが。逆に言えば、パッと思い浮かんだことを大切にしなきゃダメってことです。

いま、何か浮かびましたか? それ、どうか大切に。
(2009.5.23)

アマチュアリズムの極致がプロフェッショナルだ。
血管外科医として信頼を集める大木隆生医師の言葉です
(14日の『プロフェッショナル 仕事の流儀』)。
「人に喜ばれたい」という思いで全てを犠牲にして病に立ち向かう。そうした 信条が、プロフェッショナルを「アマチュアリズムの極致」と定義する一見、 矛盾する表現に結びついたのでしょう。広告を表現する仕事も、とてつもなく 純粋な選択を行なうことがあります。カッコつけるようですが、それが一番 質の高い表現である場合は。それにしても大木医師、根っからのお医者様ですね。

「100回生まれ変わっても100回外科医になる。」彼の言葉です。
(2009.4.24)


仕事は長く厳しいが、                            
いつか誇りと品格を得る時が必ず来る。

「新社会人おめでとう。」と題したサントリーの4月1日の広告における 伊集院静さんのメッセージの言葉です。広告なので「笑ってうなずく時のために」、 「皆でハイボールで乾杯」と、こうなるのですが、伊集院さんは「今何より大切 なのはともに生きるスピリット」とメッセージされています。多分に新社会人を 意識したチームワーク論に終始していましたが、冒頭のこの言葉は身にしみます。
じっくり一つの仕事に精進していれば、いつかはものになると励ましているのです。
そして、もちろんそれは嘘ではない。いや少なくとも、

品格は意識できないかもしれないが、誇りはいつしか心に宿るのです。
(2009.4.20)

ラジオって子はもっとできる子だと、
ずっと思い続けている。

糸井重里さんは、そう言って、広告のメディアとしてはどんどん衰退している ラジオの可能性への希望(期待とは少し違う)を述べたのです
(『ブルータス』3/1号〜なにしろラジオ好きなもので。)。
確かに、深夜に聴くDJの染み入る語りや、音楽に絡めた軽快なトークの味は、 テレビでは得られません。日本語で考え日本語で書くコピーライター事務所である 我が社は、日本語を聴きながら仕事もできず、毎日AFN(American Forces Network=米軍放送)を聴いています。糸井さんは言います。

夕方にラジオから流れてくる大相撲の中継は虫の声や風のささやきに近い。
(2009.3.16)



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